映画評論家、町山智浩によるラジオでの映画紹介。個人的おすすめを選びました
爆笑、胸熱、感動。 町山が教えてくれた「映画の見方」
映画を現代社会や哲学・思想と結びつけて鑑賞する事の大切さを教えてくれた町山智浩。「このセリフ、この映像は何を意味しているのか」をとことん考え、分からなければ調べる。それによって映画も、その向こう側にある世界そのものもより鮮明に見えてくるのだ。
こちらでは、僕が個人的に感銘を受けた町山氏の映画紹介の中から、心に残っている10個をご紹介します。超インテリであり話芸にも秀でた町山智浩。聞くだけでも楽しい映画紹介音声をどうぞ!
町山智浩の映画紹介。ラジオ〜ポッドキャストのおすすめ10選
アクト・オブ・キリング
(↑映画の紹介)
(↑その後の試写会の様子を激怒と共に伝える)
日本のマスコミは馬鹿だ!!!!!!
お前ら最っ低だ!デヴィ夫人のビンタ100発喰らっとけ!
かつてインドネシアで起きた大虐殺を、その当事者達に再現させるという戦慄のドキュメンタリー映画、「アクト・オブ・キリング」。その試写会に訪れたデヴィ夫人に対する日本のマスコミの対応があまりに酷いと激怒。
町山氏は映画評論家としてはもちろん、宝島時代には北朝鮮の拉致問題などにいち早く目をつけて糾弾し続けていた真のジャーナリストでもある。「マスゴミ」という言葉も定着した昨今、こういう話を聞くと大手メディアにはまともなジャーナリズムはマジで期待出来ないのだなと思ってしまう。
ロッキー、シティ・オブ・ゴッド
個人のフラストレーションを爆発させた映画であればこそ、観客のフラストレーションをも消化させる。
マーケティングで、金儲けの頭だけで作った映画は観客にとっても他人事。そんなものはどうでもいい。
実際に神回として名高いポッドキャスト。2本の映画を通して「映画の真の快楽」について語る。「ロッキー」のくだりはあらゆる所であらゆる人が言っている内容なのではあるが、町山にこのように言われるとやっぱりずしんと来るものがある。後半の「シティオブゴッド」の説明も非常に素晴らしい。
風立ちぬ
庵野秀明がなぜ主人公の声を演じているのか。 「人の心も世の中の事にも興味は無いが、とにかく好きな事だけやり続ける阿呆のような男」じゃなければならなかった。この映画における二郎はまさにそういう男じゃないか。
多くの観客を困惑させた宮崎駿の最後の長編アニメ「風立ちぬ」。シーンやセリフ、主題歌の歌詞までにも触れつつ、それぞれの意味を解説していく素晴らしい回。
進撃の巨人
映画の企画自体がジャイアントキリング。巨人に挑む奴らを笑うなよ!
町山氏自身が脚本家として参加した「進撃の巨人」実写版。ネット上では「またアニメの実写かよ」系のテンプレ通りの批判がされており、もともとファンが多いだけに企画そのものに対する辛辣な意見が寄せられている。
解説の中では原作者チームが映画化に当たって多くの変更を要請したという事が言われていたりする。「実写化不可能」といわれた困難な企画に対して、作り手がまさに巨人殺しを挑んだ映画。期待しておきたい。
ダークナイト
サタンは神が作った「規範」をぶちこわす事だけを目的としており、金銭や名声には何の関心も無い。自由に向かって純粋に戦い続ける事と、非情な悪意は時として見分けがつかないものだ。
クリストファー・ノーラン監督の代表作。つくりとしては突っ込みどころも多い映画でありながら、悪役「ジョーカー」の強烈なキャラクターに惹き付けられる人が後を絶たない。その魅力について、西洋の文化や聖書などの古典を引用しながら語る極めて知的な解説が聞ける。町山氏のインテリぶりにもしびれる神回。
千と千尋の神隠し
「千と千尋」は売春に関する映画。これは宮崎駿自身が言ってる事だからね。
「千と千尋」は好きな人が凄く多い映画なのだが、以上の事実を知らない人があまりにも多い。教えてあげると「そんなワケない」と否定したり、「夢を壊さないで」と頭悪すぎる反応を示したりする。
映画や芸術を自分の思うがままに解釈すれば良い、というのは間違っている。好きな作品だと思ったら、作り手の意図や制作の背景をしっかり踏まえて、それらを受け止めて行くべきだ。
キャプテンアメリカ ウィンターソルジャー
ウィンターソルジャーとは、ベトナム戦争時に虐殺や戦争犯罪があったか否かをを検証する公聴会の名前。ドローン攻撃を彷彿とさせる敵役といい、政治的な色が極めて強い映画。
そんじょそこらの政治記者や経済ジャーナリストよりも、遥かに詳しくアメリカの政治に関して解説してくれる町山氏。アメリカに対する愛憎が映画評論をより立体的に、面白くしていると感じられる神回のひとつ。
8マイル
取材でニューヨークに訪れたものの、時間が余ってしまったためラジオの収録ついでにマンハッタンを探訪するという異色の回。歩きながら8マイルの紹介をし始めるうちに、謎のビデオの撮影現場に迷い込むという、ライブ感がすごいポッドキャストとなっている。
ウォーリー
「ウォーリー」には、監督やスタッフ達が好きな60〜70年代のSF映画に対するコアなオマージュが沢山盛り込まれている。
ピクサーの傑作「ウォーリー」。関連性の高い「2001年宇宙の旅」、「THX1138」や「未来惑星ザルドス」のような、スターウォーズ以前のSF映画を詳しく紹介してくれる回。
恋はデジャ・ブ
何の変わり映えもしない毎日が延々と繰り返されるだけの人生が永遠に続く。それは拷問のような日々かもしれない。しかしそれを拷問ではなく喜びとして受け止められるのだとしたら、そんな人こそが立派なのではないか。
マルクスやニーチェ、カミユを引用しながら、この映画の哲学的な側面を明快に示している。文学や思想・哲学を補助線として映画をより深いものとして紹介してくれる。
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ
まどマギに関して、凄いアニメだと感じながらも何が凄いのか噛み砕ききれずにいる人は結構多いのではないかと思う。こちらでは「攻殻機動隊」や「悪魔くん」「デビルマン」の影響を考察しつつ、ゲーテの古典にも触れていく。日本のアニメ史上にしっかり根を下ろしていながらも、西洋的な宗教感覚を独自に消化した壮大な作品である事が改めて理解出来る。
今や映画好きのマスト本
「ポストモダン」を理解する絶好の資料でもある
町山氏少年時代の思い出映画
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