もくじ
2010年代前半を振り返る。おすすめの100曲をランキングでご紹介します
ジャンル無視で好きな曲を並べたら、一体なにが起きるのか?
2010年代に発売 / 発表されたあらゆる「曲」の中から、むりやり好きなものを100曲選んでランキングにしました。恋愛をテーマにしたアイドルソングから、フェスで人気のロック、ラップ、洋楽や邦楽を一切問わず、自分のiTunesとYouTubeお気に入りとCDラックと記憶を掘り返してまとめています。
2000年代にあらゆる分野で進んだジャンルの細分化はとどまることを知らず、いまや音楽においては旧来的なジャンルというカテゴライズの有意性すら疑わしい。安室と虚構キャラ(初音ミク)のコラボという、90年代には到底予想しなかった事態はそうした状況を象徴しているように思えてならない。そんな中、あえてジャンルなど無視して自意識全開でランキングを作ってみたら一体どうなるのだろうか。そんな興味から考えたのがこの記事だ。
そんな代物なので、「なぜこの曲があるのにあの曲が無い?」とか「これがこれより下はおかしい」という感想も頻発するかとは思う。ぜひぜひフィードバックをお聞かせいただければと思う。
※ちなみにルールとして、「1アーティストにつき1曲だけ」としました。そうしないとベスト300ぐらいにしないとダメになってしまうため
ではでは、御覧ください。(とりあえずベスト10だけ見たい、という方はこちら)
2010年代の曲 おすすめランキング100
100位〜91位
100 : 愛、テキサス - 山下智久
99 : ゴムまり - 面影ラッキーホール
→ 現代日本の楽曲から失われた「物語」を歌うOLH。露悪的ともいえる歌詞は人によってはかなり不快になるかもしれないが、そこにあるのは僕たちが目を背け隠蔽している本質そのものである。
98 : Audio, Disco, Video - Justice
97 : Sleepless - Flume
96 : Hulk - OMSB
95 : Wow - Siriusmo
→ 2010年頃はこういうシンセ・ディスコ系の曲にハマっていたのだが、その中もダントツの印象を残している。少ない音数と硬質なビートながらしっかりディスコしているところが新鮮だった。PVのセンスも凄いです。
94 : 人間失格 - GOMMES
93 : Say That - Toro Y Moi
92 : Royals - Lorde
91 : 才能あるよ - 在日ファンク
90位〜81位
90 : お嫁においで 2015 - 加山雄三 feat. PUNPEE
89 : 電気グルーヴ - モノノケダンス
88 : サーカスナイト - 七尾旅人
87 : ありがとう - いきものがかり
86 : I'm 沢尻エリカ - Cherry Brown
85 : Take Care - Drake
84 : それでも好きだよ! - 指原莉乃
83 : 足音 〜 Be Strong - Mr. Children
→ あらゆる事が細分化される現代にあって、90年代からほとんど変わらないポジショニングを維持しているというのは一体どういう事なのか。
82 : Video Games - Lana Del Rey
81 : Wake Me Up - Avicii
→ 2010年代は、「EDM」なる謎の概念が地球レベルで定着した時期として記憶されるであろうが、Aviciiがその空虚な中心の座を争うことは間違いない。
80位〜71位
80 : 週末Not yet - Not Yet
79 : 会いたくて 会いたくて - 西野カナ
→ 「会いたくて震える」という斬新な命題は文学から社会学にいたるまで日本の文化に多大なる影響を与えた。「会うとは何なのか?」「震えるとは何なのか?」を真面目に考えると、なかなか意義のある議論ができそうである。
78 : Lost Stars - Adam Levine
77 : 大島麻衣 - メンドクサイ愛情
76 : 私以外私じゃないの - ゲスの極み乙女。
→ 日本のSNS時代におけるロックの、ひとつの完成系。楽曲の完成度とビジュアルイメージの隙の見せ方のバランスが絶妙なのだと思う。
75 : 恋するフォーチュンクッキー - AKB48
74 : アイドルばかり聴かないで - Negicco
73 : Live While We're Young - One Direction
72 : ようかい体操第一
71 : ジャンピン - KARA
70位〜61位
70 : Shake It Off - Taylor Swift
69 : Stranger - 安室奈美恵
→ 2000年代に比べると、安室はかなり大人しかった。「PAST < FUTRUE」の奇跡を僕は今も待っていますよ。
68 : I Gotta Go - SALU
67 : 僕に彼女ができたんだ - SHISHAMO
66 : オリビアを聴きながら - ハナレグミ
→ このアレンジはずるい。カラオケで流れると無条件に幸せになれます。
65 : That's me - S.L.A.C.K.
64 : Somebody That I Used To Know - Gotye
63 : 携帯電話 - RADWIMPS
62 : 絶滅黒髪少女 - NMB48
61 : Say My Name (feat. Zyra) - ODESZA
60位〜51位
60 : You - Gold Panda
→ たぶん僕がポストダブステップ / ビート系にはまるきっかけになったのがこの曲だった。GiraffageやCashmere Catなどなど、「動物の名前を入れたビートメイカー」のさきがけでもある。
59 : I Wish For You - EXILE
58 : 物騒な発想 - K DUB SHINE + 宇多丸
→ 内容が政治的であれば振る舞いとして政治的なのかと言われればそんな事もないわけで、安易に平和やリベラルを叫んだ所で何にもならないのだが、それにしても近年の表現者一般は政治性から距離を取り過ぎている。そんな中で真っすぐに政治批判 / ネトウヨ批判をやってのけたこの曲はもっともっと評価されるべき。日本人のラップに違和感があるとかほざいていた某陸上選手よ、君の大好きな新渡戸稲造でも何でも持ち出して、このぐらいの力強い日本語を紡いでみたらどうだい?
57 : マル・マル・モリ・モリ - 薫と友樹、たまにムック
56 : ないものねだり - KANABOON
55 : Runaway - Crywolf & Ianborg
54 : Truth - Submerse
53 : ディスコード - 東京女子流
52 : Wildfire - SBTRKT
51 : Ryan Must Be Destroyed - Ryan Hemsworth
50位〜41位
50 : Love Again feat. JMSN & Sango - Ta-Ku
49 : Do You... (Cashmere Cat Remix) - Miguel
48 : 夜の踊り子 - サカナクション
47 : 女々しくて - ゴールデンボンバー
→ たった一曲であまり多くものを脱構築してみせたゴールデンボンバー。その様子は一言で痛快だった。綾小路翔は彼らの登場に心底嫉妬したことだろう。音楽批評は生きている。
46 : I Love You - Lido
45 : Katachi - トクマルシューゴ
44 : After Burn - Bobby Tank
→ 曲も凄いのだが、PVが個人的に生涯ベストである。先日Fire TVが届いて最初にやったことが、この曲の映像を大画面液晶テレビに写して呆然とそれを眺めるということで、それが2010年代前半の終わりに近かったというのが何かの符丁であったことはぼくの中で明らかだ。
43 : 仕事しよう - NORIKIYO
42 : Awake - Tycho
41 : Wow - Siriusmo
40位〜31位
40 : Beats & Rhyme - MACCHO , NORIKIYO , 般若& DABO
39 : Go - The Chemical Brothers
38 : Spending all my time - Perfume
37 : 電波ジャック - パスピエ
→ 「パスピエとの出会いは新鮮な驚きだった。(・・) その驚きとともに私は『ナンバーガールやミッシェル・ガン・エレファントがロックであった時代』がとうとう完全に過去のものとなったことを認めたのである」
36 : Monster - 嵐
35 : Baby I'm yours - Brakebot
→ その後のDaft Punkのディスコ化を予見したかのような、Ed Bangerの佳作。こちらもPVが素晴らしすぎる。Aeroplaneのリミックスもかなり良かったですね。
34 : So Beautiful - Robert Grasper
33 : Happy - Pharrell Williams
32 : Go With It - TOKIMONSTA
31 : Meteor - キエるマキュウ
30位〜21位
30 : くちびる - aiko
29 : CANDY CANDY - きゃりーぱみゅぱみゅ
28 : Lookout, Lookout - Perfume Genius
→ 壮絶な生い立ちとバックグラウンドを持つシンガーソングライター、マイク・ハドレアスのソロプロジェクト。信頼できる音楽ブログ「Waste of Pops」での激推しで知った。彼が現在のようなLGBT喧しい状況に回収されてしまうとしたら大変残念なのだが、安易な政治的言説を食い破る文学的強度が確実にある。
27 : ワクテカ Take a Chance - モーニング娘。
26 : RED PILL - AKLO
→ 日本語ラップの歴史をはっきりと更新した名盤「PACKAGE」からの一曲。「上手いラップ」は「英語っぽいラップ」でなければならないという強迫観念を、日本のヒップホップの一部分に確実に植え付けている。
25 : コーヒー - スガシカオ
24 : ミス・パラレルワールド - 相対性理論
23 : 僕らの夏の夢 - 山下達郎
22 : Ultra Thizz - Rustie
21 : 行くぜっ!怪盗少女 - ももいろクローバー
20位〜11位
20 : Moment - Lapalux
19 : Show Off - Simi Lab
→ 日本人がどんどん馬鹿になっている理由はいろいろ言われているが、やっぱり国内に移民が少ないせいだという説がもっとも信憑性が高い。Simi Labの存在は端的にそれを実証しているといえるだろう。
18 : Drive - Jazzdommunisters
17 : Another Life - D'Angelo and The Vanguard
16 : About You - XXYYXX
15 : Moments - Giraffage
14 : Get Lucky - Daft Punk
→ ひとつ分かったのは、「今回のDaft Punkは良かったか悪かったか」みたいな事はもう問題にならず、とにかくDaft Punkがやったことがその後のデファクトスタンダードになるから何も考えずに受け入れろという風潮が、すでに準備された世界になってしまっているということだ。しっかしサンレコのインタビューは面白かった。マスターテープにこれだけ執着するという感覚は、これから先のプロデューサーには決して理解されないものなのだろう。
13 : MATCHSTICK SPIT - tha Boss
12 : 水星 - tofubeats
11 : Fight Club - Jinmenusagi
→ 「音楽を聞いて気分を盛り上げる」なんてこともしなくなった今日このごろ。そんな中自分のあらゆる怒りを仮託出来る凄いラップに出会った。ぼくにだって「腐れ✕✕✕✕野郎ども」と叫びたくなるときがある。
2010年代のおすすめ曲 ここからランキングベスト10!
第10位 : そしてまた歌い出す - RHYMESTER
日本語ラップの生きる伝説、といっても差し支え無いであろう存在になってきたライムスター。大衆音楽とはすでにそこにあるものであり、常に懐かしさと新しさを伴って現れる。2010年代の日本は2011年3月の出来事をその始まりと記憶されるのだろう。そのわずか数週間前に発売されたRHYMESTERのアルバムのメイントラックがこの曲である。震災直後の騒然とした日本全土であらわになった、ある種の不条理をわずかに早く、その時点ですでに指摘していたといえる。
第9位 : Limit to Your Love - James Blake
「ポスト・ダブステップ」の寵児となった英国の俊英による、衝撃のファーストアルバム『James Blake』の中の一曲。テイ・トウワはブレイクの音楽について「教会音楽」であるという極めて鋭い指摘を行った。セカンドアルバムでも見せた素朴なほどの歌詞の自閉傾向とは裏腹に、生バンドを伴ったライブの緊張感なんかを見ても、やはりダンスミュージックとしてパーフェクトに新しい試みを行っている。
第8位 : Before I Move Off - Mount Kimbie
2009年の登場以来、独特な音像と意欲に満ちた音楽的挑戦で世界中のダンスミュージックファンの心を捉えている二人組、Mount Kimbie。「Before I Move Off」はミニマルさを温かみに昇華させた稀有な作品で、なんといってもこのありそうでなかったPVが効いている。
第7位 : Take U There - Jack U
不良どもがまたとんでもない仕事をやってのけた。当時日本語ラップやビート系 / チルステップにこっていた僕は、DiploとSkrillexが組んでアルバムを出すということをリリース直前まで知らなかったのだ。一聴しての感想は「ダンスミュージックを好きで良かった!」という痛快にして爽快な勝利の感覚だった。彼らは迫り来るEDMという得体の知れない怪物から逃げること無く、同時に自分たちの音楽を貫き通してとんでもないものを作り上げた。この世界には実に多くのビートメイカーがいる。DAWやシンセやリズムマシンと向き合って、己のビートを探している。『Jack U』は決して彼らを上から目線で見下ろす事はなく、しかしながら誰の手にも届かないはるか遠くから爆音で励ましてくれる、そんなアルバムである。
第6位 : プライヴェート - 小泉今日子
菊地成孔プロデュースの「大人の唄」と大変迷ったのだが、やはりこっちを推すことにした。いずれにしてもアルバム「Koizumi Chansonnier」は超名盤である。
第5位 : Dragon Night - SEKAI NO OWARI
日本のロック批評 / 音楽ジャーナリズムみたいなものが未だにあるとして、僕がそういう連中を信じられないのは、端的に言えばセカオワを正面から語れていないという事に尽きているのだ。これだけの成功を収めているという事実を分析することも無く、「ファンタジーっぽい」「子供向けっぽい」というだけで自分たちには関係ないと判断して無視する。無視せず取り扱うにしても、アーティストの「人間性」やら「世界観」といった、とんでも無く狭くわけの分からないところにしか言及出来ない。ある批評家は反知性主義とは教養が無いということでは無く、自らの知性をたえず疑うこと、知らない領域に対する関心を失わない姿勢を欠いた状態なのだと言っていたが、その意味では日本の音楽ジャーナリズムは極めて反知性的だと言わざるを得ない。彼らが音楽シーンの中心にいるという事はある面では事実なのだろうが、あんな学生サークルの延長上のような狭い言葉遣いしか出来ないようでは、当の音楽シーン / ロックシーン自体が没落の一途を辿るのみだろう。
第4位 : Genie - 少女時代
普通ならGeeを推すべきところなのだとは思うが、個人的にはやっぱりこちら。あまり指摘されていないけど、中村彼方氏による日本語詞が実に良い仕事で、ワンフレーズ目の「お呼びですか」の時点で全ての成功が暗示されているような気もする。この曲の異質なクールネスと浮遊感は「モード」という楽曲構造によるものらしく、K-POPアイドル史を代表する一曲でありながら楽理的な分析も各所でなされたという、噛みごたえという意味では最強のトラックである。
第3位 : Never Catch Me ft. Kendrick Lamar - Flying Lotus
フライング・ロータス。ジョン・コルトレーンを叔父に、アリス・コルトレーンを叔母に持つビートメイカーとしてしばしば紹介される、現代最高のビートメイカー。世界中に数えきれないほどのフォロワーを生み出し、「ビート」という言葉の意味すら書き換えつつあるといっても全く過言ではないだろう。
第2位 : 坂本慎太郎 - 君はそう決めた
ゆらゆら帝国解散後、ソロとして発表したアルバム「幻とのつきあい方」所収の一曲。ゆらゆら時代から圧倒的な言葉のセンスを持っていたことを再発見させられる。
第1位 : R.Y.U.S.E.I - 三代目 J Soul Brothers
そもそも自分がこの曲をいかに好きかということを表現するためだけに、こんな記事を書いてしまったような気すらする。
佐々木敦著「ニッポンの音楽」によれば、70年代以降、日本の音楽とはつねに海外(≒アメリカ)との距離感を確認する過程でその歴史を作ってきたという見方が可能である。その歴史の一部には当然、日本語の音韻的特徴をいかにして最先端のリズムに当て込むか、という問題に対する試行錯誤がある。はっぴいえんどと日本語ロック、近田春夫と日本語ラップなど、「アメリカかぶれ」という紋切り型の批判を超えて、日本でしか生まれ得ない音楽をぼくたちはいつだって見つけ出してきたのだ。
小室哲哉以降、J-POPの構成要素として自明的にダンスミュージックが含まれてしまうわけだが、「R.Y.U.S.E.I 」の登場はその20年以上にも及ぶ歴史もまた試行錯誤であり、同曲によってやっと確かな答えが出たのだという事を遡行的に示したと言える。日本語の音韻をEDMのシンセと溶け合わせ、ダンスミュージックの形式的な美学を守りながらもJ-POPとしての体裁をも貫き通した上、野猿→EXILEを経て完成された三代目 J Soul Brothersという諧謔的マチズモによって商業的にも完璧な成功を収めた。よって僕の中では異論なくこの曲が2010年代前半の最重要曲にして最高の一曲である。
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