日本映画 昭和の名作
昭和の映画の魅力
昭和に作られて今でも人気が高い映画の中から、僕が特に好きな映画7作品を簡単な感想付きでご紹介します。あまり昔の映画を観ない方からすると、「なんとなく古い映画はとっつきにくい」という場合も多いかもしれません。もちろん画質は少し荒く古いものだと白黒、音もノイズが多くセリフが聞き取りにくいもの多いです。でも慣れてくるとそれも魅力になってきますし、何よりいまの日本の映画界では絶対に作れないような作品が沢山あります。
また、古い映画だからといって説教臭かったり堅苦しい雰囲気かと言えばそんな事はなくて、逆に最近の映画より遥かに若々しく新鮮な表現を見いだせることもある。それも昭和の映画を見る楽しさではないでしょうか。こちらで紹介するのはすべてレンタルDVDで観たので、大きめのツタヤやゲオに行けばたいてい借りる事ができると思います。
(※画像クリックで映画のより詳細な情報を見られます。)
昭和のおすすめ日本映画一覧
狂った野獣('76)
全く予備知識無しで観たほうが良いと思うので、あらすじは書きません。これから観るという人も、出来ればAmazonの解説等は見ずに観た方が良いと思うな。それだけ、何を言ってもネタバレになってしまうような重層的な仕掛けがなされた作品。主演は渡瀬恒彦で、とんでもないアクションシーンをスタント無しでこなしている。あるポイントを境に渡瀬演じる主人公が「狂った野獣」としか言いようが無い文字通りの暴走ぶりを発揮する。
詳しくは知らないのだけれど、キアヌリーブスの「スピード」って間違いなくこれをパクってますよね。
ゆきゆきて、神軍('87)
超過激なアナーキスト、奥崎謙三が戦時中にニューギニアで起きたある事件の真相を追うべく、当時の兵士達を追求していく様子をとらえたドキュメンタリー。奥崎はこれ以前には一般参賀の際に天皇陛下をパチンコ玉で攻撃したという罪で服役したという強烈な実績ももっている、本物のアレな人である。
今でいえば中二病やネトウヨ的なものや真面目系クズの悪い部分だけを純粋培養して作り上げたような異様な光景が広がっている。ちなみにマイケル・ムーアはこの映画のメタメッセージを受け取る事に失敗しつつも大きな影響を受けてドキュメンタリー作家を志したらしい。映画史上最も大きな誤配のひとつだろう。
時をかける少女('83)
原作は筒井康隆、監督は大林宣彦。そしていまではすっかり「善の美魔女」ポジションを確立したような感じもある原田知世が主演。リメイクも盛んに作られているので名前だけは聞いた事がある、という人も多いかもしれないが、ストレートに良い映画とはとても言い難くて、相当変わった映画だ。例えば出演者達のセリフ回しが棒読みなのは、大林監督があえてそういう演出をしたかららしい。日本のアイドルはあまり歌や演技が上手すぎるとファンが喜ばない。こういった今では割と通説的な部分を先駆的に感じ取って実践していたという意味でも偉大な功績である。
映画最終版のタイムスリップのシーンは本当に感動的で、アイドル映画が突然哲学的・宗教的な領域に入り込んでいく。ケミカルブラザーズの「Swoon」てこれをパクってるとしか思えないんですけど、だれか詳しい方教えて下さい。
仁義なき戦い 広島死闘編('73)
2014年に無くなった菅原文太氏の代表作、「仁義なき戦い」の2作目。スピンオフ的な扱いでありながらもかなり評価が高い。僕は個人的には3作目の代理戦争が一番好きだが、一番語りたくなってしまうのはやっぱり広島死闘編かな。組織のしがらみや上からの圧力の中で居場所を失って潰されてしまう若者を描いている。
仁義なき戦い全般に言える事だが、やくざ映画はただ単に暴力的で男性的な映画であるだけではなく、こういった社会の本質的な不条理を描いている作品が多い。一作目が大ヒットしたのは、高度経済成長の企業社会に対して不満を抱いていた一部のサラリーマンたちの心をつかんだかららしい。
狂い咲きサンダーロード('80)
確かたけしが影響を受けた映画の一本に挙げていた。「マッドマックス2」と「時計じかけのオレンジ」を混ぜたものを暴走族でやってみた、という感じの映画。舞台は近未来の日本。暴走族が警察に飼いならされてしまった現状に反発し、一人で戦い続ける男の物語。
色々あって主人公は上記の画像のような姿になってしまう。ここでもパクリ考察を入れておくと、これはロボコップの元ネタになったのでは?と見た瞬間思った。
羅生門 ('50)
ジジェクによるラカン解説書「ラカンはこう読め! 」でも参考資料として中心的に扱われているように、映画という枠を完全に超えて文芸作品として世界の歴史に残るであろう映画。人は弱く愚かなので、真実と向き合って生きていくことは非常に難しい。時には真実と向き合わざるを得なくて絶望的な気持ちになったりもする。まあそれでも生きていくしかないじゃないか、という内容。
1950年の映画でありながら、話の語り口や映像の迫力、そして三船敏郎をはじめとした役者たちの魅力は全く新鮮。「世界の黒澤」も2010年代の日本においてはヘタレ愛国者による「こんなにすごい日本」キャンペーンの材料になってしまった。彼らは一本でも黒澤の映画を観た事があるのだろうか。
ときめきに死す('84)
森田芳光監督作品の中ではダントツに一番好き。非常に変わった映画で、好き嫌いがかなりはっきり分かれると思う。夏の北海道、渡島を舞台に、ある組織に雇われた医者と謎の若者、そして組織から派遣された女性の奇妙な共同生活の一幕を描く。主演は沢田研二。今ではソフトバンクCMでおなじみの樋口可南子がめちゃ可愛いのも見所。
夏の道南というのは、それだけでどこか不穏な空気が漂っている。さんさんと降り注ぐ太陽と青々とした森、そしてどこか冷や汗を誘うような涼しさと空気感。そんな渡島の雰囲気が、この三人の奇妙な関係性をそこはかとなく魅力あるものに仕立て上げている。
このアートワークとかもほんと最高!
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